*---- 駒場苑ワンポイント講座・理論編 ---------------------- もくじ -- home * back * --------------*

 

         
 
 
   


 

○定義

一時的な体調不良時や終末期以外で日常的に昼夜24時間ベッドで寝て過ごす生活をゼロにする。

○理由

日常的に昼夜ベッドに寝て過ごす事で廃用症候群が進み、
@表情がなくなる 
A心肺機能が低下し、咳ができなくなり誤嚥性肺炎なる。 
B内蔵の機能が低下し、食欲がなくなる 
C寝ていた方が安静で安全だと思われているが、血圧の調整が低下する
D認知症になる 
E褥瘡ができる 
F寝ながら排便するのが難しくなるので便秘になる 
Gオムツの使用により常時失禁状態となり膀胱炎をおこす 
H筋肉が萎縮し、座位がとれなくなり、寝たきりの生活が加速する 
I拘縮がおこる 
J骨が萎縮し、ちょっとした事で骨折する
…等様々な機能が急速に低下し、その方の尊厳を崩壊させてしまう。

また病院のように治療最優先で治療のためなら本人の意思に関わらず、ベッドで安静にすごさなくてはいけない医療モデルと違い、特養施設ではその方を生活者としてとらえ主体的に生活してもらう事を目的とした生活モデルである事からも、寝かせきりにしない事が大切であり、基本である。
生活は寝る事を基本とするのではなく、離床しての座位を基本とする。

座る事の効果としては、
@食事・排泄・入浴を座位で行う事でそれぞれ自立に繋がる動作が増える
A筋力低下の予防
B心肺機能が向上し、咳込みの力がつき誤嚥性肺炎になりにくくなる
C床ずれの予防
D座っているだけで座位バランス能力の向上
E寝る、起きるの刺激ある生活をする事で血圧調整機能の向上
F免疫力がが高まり感染症や風邪の予防になる
G拘縮・骨折の予防
H心理的・知的能力の低下予防
I表情・笑顔が出る
等があげられる。

○具体的方法  

食事は食堂または居室で座って食事をして頂く・排泄はトイレに座って排泄して 頂く・入浴は個浴で座って入浴して頂く等、生活の中でベッドから離れ、起きて それらの行為をする事で、寝かせきりを防ぐ事ができる。
リクライニング車椅子の 方も徐々に角度をあげていき、普通車椅子で座位ができるようアプローチする。
その他趣味活動やレク・散歩等ご本人の楽しいと思う活動を日中行う事により寝 かせきりを防ぐ。

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○定義

日中のオムツ・リハビリパンツの使用をゼロにする。
日中は綿パンツ(または+パット)でトイレ誘導する。
どうしてもトイレ誘導できない方も日中は綿パンツ(または+パット)でパット交換で済むようにする事。

○理由  

オムツをトイレ代わりにする事は、お尻が気持ち悪い・不潔・蒸れるというだけでなく、寝ながら排泄する事は生理学的に無理な排泄動作を強いており、その結果益々便秘になったり、全身状態が悪化して、認知症を含む心身の廃用症候群を促進する事になるため。
つまり、オムツを使わずに座って排泄する生活習慣を守る事はその方のプライド・尊厳を守る最高次元の支援である。

○具体的方策  

日中食後・おやつ後にトイレまたはPトイレに座って排泄して頂く。
排泄しやすいように
@トイレでの座位は足を床にしっかりつけ、前かがみの姿勢をとるようにする
A肛門が便座に座った時にお尻の肉で挟まれないように配慮する
Bトイレの訴えがあったらどんなときでもトイレ誘導を最優先する。
Cトイレに座った際に、のの字マッサージ行い、腹部に刺激を与える。
それにより、日中オムツ・リハビリパンツの使用の必要性がなくなり、綿パンツ(または+パット)で過ごす事ができる。
夜間も夜用のパットを使用する事で綿パンツに大きめパットで対応できる。
どうしてもトイレ誘導が困難な方も尿量に合わせたパットを使用する事や頻度を調整する事で綿パンツにパットでパット交換で過ごす事ができる。

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○定義  

機械浴で入浴されている方をゼロにする。

○理由  

機械浴では、寝たまま入る事で足が浮き、頭が沈みやすくなるので、姿勢が安定せず怖い。
ストレッチャーで寝ながら運ばれ、寝ながら髪や体を洗われる全介助の受け身的入浴になってしまう。
万が一落下した場合死亡事故につながりやすい。
等のようにデメリットが多く、何よりざぶんと座って入る日本人の入浴の習慣にそぐわないので、日本人の生活習慣を大事にする個浴での入浴をして頂く。

個浴であれば、姿勢も安定し、ご自分でできる事はご自分でやって頂く事ができ、慣れ親しんだ入浴の習慣を継続する事ができる。
さらに駒場苑では、ひのきのお風呂のため、温泉気分を味わう事ができる。

○具体的方法  

端坐位がとれる方は、木の入浴チェアーを使用。
端坐位が難しいも座位がある程度とれる方は入浴チェアーを使用。
入浴チェアーでの座位が困難な方はリクライニング式の入浴チェアーを使用。
この3つの入浴チェアーを使う事で、浴槽横で洗身等をする事ができる。
浴槽での座位は頭はお尻より少し前になるようにし、足は浴槽壁に付けてブロックできるようにする事で安定する。
また、それらの入浴チェアーを使用しても洗身が難しい場合は、ゆったり湯にて寝ながら洗身し、ゆったり湯に入る事とする。

のんびり湯・ゆったり湯を有効に使用し、機械浴がなくても入浴できる状態を継続する。

 

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○定義  

介護士の配慮で防ぐ事ができる誤嚥性肺炎をゼロにする。
誤嚥性肺炎と診断された方を発症者とする。

○理由  

誤嚥性肺炎は寝ている間に唾液等が入って肺炎を起こす、防ぎようのない誤嚥性肺炎もあるが、介護士があやまった食事のケアをした事で起きてしまう誤嚥性肺炎もある。
よって介護士が正しい食事のケアをする事で防げる誤嚥性肺炎はすべて防がなくてはいけない。

○具体的方法  

食事の際の姿勢の配慮としては、
@できるかぎり食事の際は椅子に座ってとって頂く。
A食事姿勢は足がしっかり床について前かがみの姿勢でとって頂く。
Bテーブルの高さは座った時におへその辺りになるようにする。
C背もたれのある椅子に深く座る。
Dうとうと寝ながら食事・水分をとらない。
Eベッドやリクライニング車椅子の方もできるだけ頭をあげて食事・水分をとる事を行う必要がある。

食事介助の配慮としては、
@立ったまま食事介助をしない。
A下からスプーンや箸を運ぶ。
Bペースをその方のペースに合わせて早く行わない
C小スプーンまたは箸で行う。
Dきちんと覚醒してから食事して頂く。

食後の配慮としては、
@歯磨きをしっかり行い、口の中に食べかすがないようにする。
A食後すぐに寝ないようにする(食後の歯磨き・トイレの時間も合わせて30分は起きていて頂く)

      

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○定義  

終末期のような特別な状況以外の脱水者をゼロとする。
脱水と診断された方を発症者とする。

○理由

高齢になると誰でも体内の水分が少なくなる一方、喉の渇きも感じにくくなります。これが脱水を起こしやすい要因となり、最悪の場合死に至る事もあります。
そのような事にならぬよう、早期発見早期予防が重要です。

脱水の症状としては
@元気がなくなる
A食欲がなくなる
B尿量の減少・便秘
C吐き気
D37℃前後の発熱
E皮膚の乾燥
F傾眠傾向
G精神症状(うわごと・せん妄・幻覚)
等があげられ、特に夜間のせん妄や不穏の原因はほとんど脱水症状によるものだと言われている。

そのような症状が出たらすぐに脱水を疑い、またそのような症状が出る前に日ごろから充分な水分の摂取を促す必要があるのである。

また、食べたくない理由としては、
@好みの食べ物・味ではない
A食事の形態が合っていない
Bお腹がすいていない
C口腔内に問題がある
D脱水
E便秘
F発熱等の体調不良
G生きる気力がない
Hスプーンや箸など道具が合ってない
I机や椅子が合ってない
J食事の席のトラブル
等が考えられる。  

○具体的方法

@1日800ccの水分の摂取
A夏ならカキ氷・冬ならスープ
Bシャーベットやアイス、ゼリー、プリン等の水分に近い物の提供
C懐かしいサイダーやカルピス
D陶器の湯のみ等見た目の配慮。

食欲不振の対策としては、
@お腹が空くまで待つ
A好きなものを食べる
B出前をとる
C会食をする
D外食をする
等があげられる。

また、口から食べる事の大切さを理解して食事介助を行う。
@目が覚める
A内臓が目を覚ます
B脳全体が活発になる
C運動・感覚をつかさどる部分が活発になる。

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○定義  

4点柵・Y字ベルト・ミトン等の使用や縛る事で身体的自由を奪う行為、過度の精神薬・睡眠剤の服用など介護保険上拘束と認められるものをゼロとする。

○理由  

生活する以上、すべての方に転倒等の事故の可能性はつきまとう。
もちろん介護士の配慮で防げる事故は起きないようしなくてはいけないが、事故には絶対に防げないものもある。
しかし、その事故を防ぐ為にひもで縛ったり、ベルトで動けなくする事はその方の生活も尊厳も奪います。
身体拘束は虐待と定義される事もあります。そのような事までして防ぐ事故は結果としてその人のためになっていない。

○具体的方法  

@全職員体制での見守りヘルプ体制
Aその方と一緒に介助に回る
Bミトンは手袋で指先の自由を確保
Cその方の当たり前の生活習慣や趣味を大切にしたケアでの精神的安定
D何らかの作業をして頂き、気分を紛らわす

 

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○定義  

下剤を服用する事による排便をゼロにする。 
最終手段としての服用以外の精神安定剤の服用をゼロにする。

○理由  

下剤を使用しなくては排便できない場合もあるが、下剤は内臓機能への負担を伴うものであり、あくまで最終手段としなくてはいけない。
精神安定剤もADLの低下、活気がなくなる、痰が絡みやすくなるなどの嚥下機能が悪くなる等副作用も多く、あくまで最終手段としての服用にしなくてはいけない。

○具体的方法  

※下剤
@食後のトイレ誘導
A水分1日800cc摂取
B座位の時間の確保
C運動をする。
風船バレーなども効果的だがレクは毎日できるものではないので、日常的に特に歩行、立ち上がり等で足をしっかりついて前屈みの姿勢で立って座ってして頂く、移乗時安易に全介助にせずに本人のできる力を必ず使ってもらう、臥床時もズボンを上げる時に腰を上げてもらう、その他での本人のできる事はやって頂くなど1日1日の生活の中で必ず行う動作を、介護士が生理学に合った動きを引き出す介助をする事、生活そのものがリハビリという生活リハビリとしての運動が重要である。
Dファイバーの使用
E朝一番の冷たい水または牛乳

※精神安定剤
@水分1日800cc摂取により脱水を防ぐ
Aトイレ誘導により便秘を防ぐ
B当たり前の生活習慣や趣味を大切にする
C居室を本人の私物でいっぱいにし、落ち着く生活空間をつくる
Dフロアの雰囲気をレトロで和風な落ち着く空間にする
E運動会のように職員がばたばたあわただしく動かない、
ご利用者を職員の都合、効率化で振り回すのではなく、こちらが振り回される側になる事
F職員が感情的になったり、失礼な声かけをせずに誠意を持って訴えを傾聴する

 

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○7つのゼロは要するに、
その方の今までしてきた当たり前の生活習慣と1人1人の生活スタイル、個性、趣味、そしてその方の尊厳と死生観を守るケアをするための、現実的で明確な目標であり、7つのゼロを目指すという事は実は介護そのものであるという事である。
1人1人にその人らしい生活とその生活の先にある最期を過ごして頂くという、介護そのものが明確に目標になっているという事を理解した上で、取り組む必要のある挑戦である。

医者は手術や薬で高齢者にアプローチし、ナースは健康管理と処置で高齢者にアプローチしますが、介護は当たり前の生活、その人らしい生活を最期まで提供する事で高齢者にアプローチをするのが介護の仕事であり、専門性である。
そして、その介護のアプローチこそが一番高齢者にとっては効果的で、元気にするアプローチである、という自信を持って仕事を行う必要がある。

その事は病院で寝たきりになり、オムツ使用で帰って来たご利用者が、施設に戻って7つのゼロを守る当たり前の生活をすると、入院前の状態に戻る事や、病院で食べられない、看取り、等の判断をされたのに、口から食べられるようになったりするようになる事から実証されている。

介護は医者やナースに負けない専門性があるという事、その専門性が7つのゼロだという事を自覚してからすべては始まるのである

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